免疫のしくみとアトピー
私たちの体を細菌やウイルスから守るしくみが、免疫システムです。
その中心を担っているのが、白血球という血液中の細胞です。
白血球には、リンパ球、マクロファージ、顆粒球の3つがあって、それぞれの特徴を生かして侵入者を無害化しています。
《それぞれの特徴》
- 顆粒球・・・細菌など比較的大きな侵入者に対応するのが顆粒球です。
細菌を飲み込み、消化して行きます。
その時、活性酸素を出し、炎症を起こします。
(抗体はつくりません。)
- マクロファージ・・・顆粒球と同様、細菌など比較的大きな侵入者に対応します。
ウイルスなど小さな侵入者の場合は、T細胞を刺激して任せるなど、
免疫の働き全体の調整、傷ついた細胞の修復を行います。
(抗体はつくりません。)
- リンパ球 ・・・ ウイルスなど小さな侵入者に対応します。
(B細胞が、抗体をつくります。)- ヘルパーT細胞・・・侵入者を見つけると、サイトカインという情報伝達物質を出し、
キラーT細胞、B細胞に指示を出します。
- キラーT細胞・・・ 侵入者に酵素を振りかけ中和します。
- B細胞 ・・・ 侵入者に対し、抗体(免疫グロブリン)をつくり、中和します。
これを抗原抗体反応、といいます。 - NK細胞 ・・・ がん細胞を見つけ、中和します。
- ヘルパーT細胞・・・侵入者を見つけると、サイトカインという情報伝達物質を出し、
成人での構成比は、顆粒球60%、リンパ球35%、マクロファージ5%、です。
免疫反応が、炎症やかゆみを起こすしくみ
顆粒球、マクロファージ、リンパ球などの白血球が、それぞれの特徴を生かしながら
侵入者から私たちの体を守る「免疫システム」。
では、なぜそれがアレルギーにつながったり、炎症・かゆみを引き起こすのでしょうか?
アレルギー反応にはⅠ型~Ⅳ型の4種類があり、下表のような疾患や症状があらわれます。
反応の型 | 名称 | 主な疾患・症状 |
---|---|---|
Ⅰ型 | 即時型 IgE依存型 | アトピー性皮膚炎 気管支ぜんそく じんましん アレルギー性鼻炎 食物アレルギー 花粉症 アナフィラキシー |
Ⅱ型 | 細胞損傷型 | 血小板減少症 薬剤アレルギーなど |
Ⅲ型 | 免疫複合型 | 慢性関節リウマチなど |
Ⅳ型 | 遅延型 | アトピー性皮膚炎 感染アレルギー 臓器移植の拒絶反応など |
では、Ⅰ型とⅣ型のアレルギー反応が疾患を引き起こす仕組みをかんたんに見てみましょう。
- Ⅰ型
Ⅰ型は、即時型といって5分~数十分程度で反応がおこります。
体内に異物(アレルゲン、抗原)が侵入すると、B細胞(リンパ球)が抗体をつくります。
そして再度、異物が侵入するとB細胞が侵入者に抗原を投げつけ、
「抗原抗体反応」がおきます。
そして肥満細胞にくっつき、そこから「ヒスタミン」「ロイコトリエン」などが放出され、かゆみ、じんましん、炎症を引き起こします。
- Ⅳ型
Ⅳ型は、遅延型といって半日~数日たって症状が現れます。
体内に異物(アレルゲン、抗原)が侵入すると、マクロファージが、異物を飲み込みます。
このマクロファージの情報で、ヘルパーT細胞が「リンフォカイン」などの起炎物質を放出して湿疹などが起こります。
(金属アレルギーなどの接触皮膚炎もⅣ型です。)
これが、
有害な異物が体内に入ったときに、アレルギー反応や炎症・かゆみなどが起こるしくみです。
そして、
アレルギー反応や炎症・かゆみは、私たちに 「これは体に悪いよ」 「悪いものを食べたよ」 という警告として起こるもの、と考えられています。
つまり、まれなケース、ということです。
日常的な食べ物や、生活の中で、常時アレルギー的反応がおこり、
炎症・かゆみが起こるアトピー性皮膚炎とは違っています。
なぜ、体を守る免疫システムが
私たちを悩ますアトピー性皮膚炎を起こしてしまうのでしょうか?
アトピーと免疫システム
免疫システムがアトピーを起こす理由は、普通に考えると3つ思い浮かびます。
(1)遺伝的に免疫システムがおかしくなっていること。
(2)毎日、排除すべき異物が大量に体内に入るような環境にいること。
(3)何らかの原因で、免疫反応の過剰反応・誤作動が起こる体質になっていること。
もし(1)が理由なら、根本治療は難しく、強い薬などで症状を抑えるしかない、ということです。
(2)が理由なら、除去食などでアレルゲンとなる食べ物を食べない、というのが正解です。
結論を簡単に言うと、
(1)が理由ではありません。
もし先天性(遺伝)によって免疫システム異常が起きているなら
遺伝子の大規模な変異が問題になります。
わずか数十年で20%以上の人がアトピーになったのですから。
そんなことはありえません。
(詳しくは、次ページ「遺伝について」を見てください。)
(2)も理由ではありません。
有害物質は、直接アレルゲンとなり、アレルギーを引き起こすことはまれで、
臓器の機能を低下させ、活性酸素を発生させ、酵素を消耗させるなど
体の疲弊、体質悪化をもたらす原因となっているのです。
その結果(症状)といして、
これまで日本人が食べてきた米や大豆や魚にまでアレルギーが起こる体質になってしまった、
ということです。
原因と結果(症状)を取り違えると、治療の方向が変わってしまいます。
(詳しくは、「アレルゲン」「環境について」を見てください。)
(3)が理由です。
そして「何らかの原因」とは
・食事のかたより・・・動物食の過剰、リノール酸の取りすぎ、野菜・酵素・ビタミンの不足
・生活習慣・・・ストレス、過労、睡眠不足、快適すぎる生活、不規則な生活、運動不足
・有害物質・・・化学物質、薬、農薬、食品添加物、水道水の塩素、環境ホルモンなど
です。
この3つの要因によって
- 自律神経バランスのかたより
- 腸内環境の悪化
- ホルモンバランスの悪化
- 体内酵素の消耗
などが起こり、
免疫反応の過剰や誤作動を起こす「アトピー体質」になっている、ということです。
ですから、繰り返しになりますが
アトピー性皮膚炎やぜんそくアレルギー性鼻炎などを治すには
アトピー体質を治すことが必要なのです。
それは単純にいえば、
自然治癒力をアップする、
体の中から元気になる、
ということです。
*次のページは、アトピーの原因、です。
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